舌長姥
主な出身地:岐阜あたり
三坂春編(みさかはるよし)著『老媼茶話(ろうおうさわ)』にある老婆の妖怪。
越後から武蔵
――現在の新潟県から東京都へ向かう二人の旅人が、
諏訪千本松原という所まで来たとき日が暮れ、
近くで一人暮らしをしている老婆の家に泊まらせてもらった。
一人はすぐ寝入り、もう一人は用心のため寝たふりをしていると、
老婆の舌が五尺ほどの長さに伸び、寝ている旅人の顔を舐め始めた。
薄気味悪く思っていると
「舌長姥、諏訪の朱の盆じゃ、捗らぬなら手伝ってやろう」
と声がし、戸を破り、顔の長さ六尺の赤い怪物が入ってきた。
旅人が刀で斬ると朱の盆は消え、
舌長姥は寝ている旅人を抱えて駆け出し、
途端に家が消えて野原が広がるばかり、
日が明けてから辺りを捜すと、そこには連れの骸骨が転がっていたという。