
鯰坊主(なまづぼうず)
森島中良著『画本纂怪興(えほんさんがいきょう)』にある妖怪。
国書刊行会刊『森島中良集』から解説を引用する。
「日向国宮崎(ひゅうがのくにみやぎ)のわたりに此魚あり。
十方内入道(とほうもないにうどう)といへる者、
破壊の罪によりて、かくあさましき姿となりたるよしなり。
彼『宇治拾遺物語』に記せる、
出雲寺の別当が鯰になりたる類ならんか。
市川のひつ立〔つ〕波の底に居て鯰坊主の声ぞおそろし 荷造早文」
「鯰坊主」は歌舞伎の役柄の一つで、
『暫』に登場するという「鹿島入道」の通称で
「鯰隈」というヒゲがまるで鯰の様な隈取をする。
「日向国宮崎」は現在の宮崎県で、
「破壊」は「戒律を破った」という事。
『宇治拾遺物語』の話は、
現別当が、父である前別当が鯰になり、
川に放して欲しいと願う夢を見た。
夢で見た鯰を見つけたが、
美味そうなので構わず食べてしまうが、
骨が喉に刺さり死んでしまった、
という話である。