
棒だら(ぼうだら)
森島中良著『画本纂怪興(えほんさんがいきょう)』にある妖怪。
国書刊行会刊『森島中良集』から解説を引用する。
「唐人之寝言に曰
「呀ダラ棒ダラ(ふわだらぼうだら)やあダラ棒だら、
沖中船頭(おきなかせんどう)あんぽん丹」
と云。
タラ・安本丹(あんぽんたん)、
ともに魚(うを)の名なり。
されば魚服(ぎょふく)に葬らるゝ船幽霊をいたみ、
その唱歌(せうが)なるべし。
ぼうだらにあたり近所はあきはてぬ折々人の生ぎもをぬく 五月雨兼古」
(「タラ」「ダラ」の字は「大」の下に「口」)
荒波に揺れる船とその横に、
ワニのような魚のような姿をしたものが描かれている。
「棒だら」は
「鱈を三枚におろし、干したもの」であるが、
他に「酔っ払い・役立たず」という意味もある。
「唐人之寝言」は
「わけのわからないことを言う」という意味。
「あんぽんたん」は
「愚か者」という意味で、
「カサゴ」の一種が江戸時代に「あんぽんたん」と呼ばれていたという。
大きい割に美味しくない魚だったという事から
「あんぽんたん」と呼ばれていたという。
「魚腹に葬らる」とは
「魚の餌になった――つまり水死の事」。
水死した人が船幽霊となるので、
その供養に「呀ダラ棒ダラ〜」を唄うというが、
わけのわからない言葉に効果があるのだろうか。