猪口暮露(ちょくぼろん)
鳥山石燕著『画図百器徒然袋』に、
猪口を深編笠のように被り、
尺八を吹く虚無僧のような小人が幾人も描かれている。
「明皇あるとき書を見給ふに、
御机の上に小童あらはる。
明皇叱したまへば、
臣はこれ墨の精なりと奏してきへうせけるよし。」
と記されているが、これは中国の逸話である。
猪口は酒を飲むときに使う小さな杯のことで、
暮露
――梵論とも書く――とは所謂、
禅宗の托鉢僧
――虚無僧ともいわれる――のことである。
これらを組み合わせて石燕が創作した妖怪であるといわれている。
暮露と虚無僧はもともとは別のものだといわれているが
「暮露暮露団」の頁で
「普化禅宗を虚無僧と言ふ。」
と記してあることから、
同じものと考えられていた時期があったかのかもしれない。