
しわん坊(しわんぼう)
森島中良著『画本纂怪興(えほんさんがいきょう)』にある妖怪。
国書刊行会刊『森島中良集』から解説を引用する。
「いにしへしわんぼうといひし者、有財餓鬼道(うざいがきどう)に落。
慾心の業火さかんに燃、爪は燈心となり、身の油は燈油(ともし)となる。
「銭ほしや。金ほしや」と泣喚(なきさけ)ひしとぞ。
されども其光り、貧女(ひんじょ)の一燈にはおとりしとなり。
しわんぼうりん燭台を吹〔き〕けしてわが爪に火をとぼしてぞ出る 高砂浦風」
巨大な手がかまどから現れ、
その親指の爪に火が灯っている姿で描かれる。
「しわん坊」とは「けちんぼ」の事。
「有財餓鬼」は「欲深い人」の事で、
地獄の一つ「餓鬼道」と掛け合わされている事から、
欲深い人が落ちる地獄の事だろう。
「貧女の一燈」は、
「長者の万灯より貧女の一燈」ともいわれ、
長者が金に物をいわせた万の燈火よりも、
貧しくても心を込めた一燈の方が尊い、
という意味。
「りん燭台」は、
けちを意味する「りんしょく」と
「燭台」を掛け合わせた言葉。
けちな人がなる妖怪なのだろう。