
尾長蛆(おながうじ)
森島中良著『画本纂怪興(えほんさんがいきょう)』にある妖怪。
国書刊行会刊『森島中良集』から解説を引用する。
「厠に生じる。
黒き尾を長く曳きたる蛆を以て、糞の如くぞびたらする。
女にことに此ばけ物、一つ変じて山の神と仇名を取、はげしき形をあらわせば、其家に金玉飛入るなり。
色々に身をば変化る物なれば昔尾張のうじの橋姫 刈穂庵丸」
黒く長い帯を引きずる女性が、井戸を覗きこんでいる姿で描かれている。
「尾長蛆」はハナアブの幼虫で、
水中に棲み、尾のような部分をシュノーケルのようにして呼吸するという蛆である。
「ひきずり」には
「おしゃればかりしてろくに働かない女性」、
「山の神」には
「女房」という意味もある。
働かない女性が女房になりしっかりすれば
「金玉飛入」
――つまり金持ちになれるという意味だろうか。
「うじの橋姫」は
「宇治の橋姫――橋の守り神であり、嫉妬深い事で知られる――」の事で、
宇治と蛆を掛けているのだろう。